
基本情報
| 名称 | 都築家糀屋蔵 |
|---|---|
| 住所表記 | 越谷市越ヶ谷本町3-29 |
| 所在地 | 埼玉県越谷市越ヶ谷本町4696-1 |
| 年代 | 昭和初期頃と推定 |
| 構造 | 鉄筋コンクリート造2階建、銅板葺、建築面積43㎡ |
| 文化財種類 | 国登録有形文化財 |
| 登録年月日 | 20121年8月7日 |
歴史
味噌醸造の商家・都築家
都築家は、越ヶ谷宿で味噌醸造業と糀(こうじ)販売を営んでいた商家です。
「糀屋(こうじや)」という通称は、まさにその屋号そのもの。糀は味噌・醤油・みりん・酒など、日本の食卓に欠かせない発酵食品すべての原点であり、都築家はその糀を手がけることで、江戸時代から宿場町の食文化を縁の下から支え続けてきました。
昭和初期という転換期に建てられた蔵
この蔵が建てられた昭和前期は、関東大震災(1923年)の教訓から耐震・耐火性能に優れた鉄筋コンクリート造の建物が急速に普及し始めた時代です。
都築家はこうした流れを敏感に捉え、伝統的な土蔵の外観意匠を保ちながら、構造には当時最先端のコンクリートを採用したと考えられます。

令和2年の改修と新たな活用
令和2年(2020年)に大規模な改修工事を経て生まれ変わりました。
外観の歴史的な佇まいはそのままに、内部は現代の活用に対応したしつらえへと整えられました。
改修後は1階に「絵本のある部屋」とカフェが開設され、2階は文化活動のための多目的スペースとして、コンサート・展示会・ワークショップなど様々な用途に使われています。

見どころ
江戸時代から日光街道・越ヶ谷宿で味噌づくりを営んできた都築家。その醸造所の建物で、当時の蔵として現存する唯一の建物です。味噌醸造で栄えた越ヶ谷宿の歴史を物語る建物として、越谷市の近代史を知るうえでも欠かせない存在です。
蔵といえば土蔵が一般的ですが、この建物は鉄筋コンクリート造2階建てです。外側からの見た目では分かり難いですが、市内でも非常に数が少なく希少性の高い堅牢な構造が大きな特徴です。
現在はこの建物だけが残されていますが、建物の外部柱や梁に残る遺構(傷など)から西側や南側に建物が隣接していた事が伺えます。
現在は外から直接出入りしていますが、当時は内蔵として利用されていました。


土蔵風の外観と鉄筋コンクリート造の内実
外壁は砂利洗出し仕上げ、屋根は切妻造平入で銅板瓦棒葺きで、外壁から飛び出していいる折れ釘の形状など、一見すると土壁に見えますが、構造は鉄筋コンクリート造です。伝統的なスタイルを築きながら近代的なデザインと素材の組み合わせから醸し出すこの時代ならではの折衷的な建築スタイルです。屋根は切妻造平入で銅板瓦棒(どうばんかわらぼうぶき)。避雷針も象徴的です。時を経て緑青(ろくしょう)を帯びた銅板が、建物全体に落ち着いた風格を与えています。

商家の品格と職人の技が光る内部の仕上げ
各階の内壁は仕上面は漆喰、収納内部は板張りで、天井は漆喰仕上げとなっています。機能的な倉庫でありながら内装には居住空間のような丁寧な仕事が施されており、商家の品格と職人の技が随所に感じられます。特に一階の漆喰天井は、入隅部(いりすみ)をアールで仕上げるなど、硬い印象になりがちなコンクリート造の空間に優しさを与えています。

吹き抜け空間と通気構造
二階は屋根面まで吹き抜けとなっており、多目的スペースとしての活用においても空間に独特の趣を与えています。
床には一二階共に松材が使用されており、二階床には物上げ様の吹抜けが二箇所設置され、格子床は嵌められています。上下階の通気換気にも気を配られていた跡が見えます。

大型観音開き鉄扉とダイヤル錠
南面には4か所の開口部が設けられており、それぞれに分厚い観音開きの鉄扉が吊り込まれています。
一階東側の出入口扉にはダイヤル錠が備えられており、まるで銀行の金庫室を思わせるような堅牢な造りで、当時の商家がいかに財産の保護を重視していたかが伝わってきます。

凝りに凝った開口部
南面の開口部のうち三箇所の窓には、外の鉄格子の内側に鉄網が貼られ、その 内側にガラス框戸と板戸が一本のレール上に左右に分かれて戸袋に収納してある。
また、鉄網の一部が開けられる様になっており、内部から蔵戸を閉められるように工夫されている。
ぜひ内部に入った際には確認していただきたい気の利いたデザインです。いずれも収納蔵とは思えない凝った造作と言えます。